【不動産投資④】理論と感情論

 今回は借主さんから家賃減額を受けたときの話について記します。
ご挨拶を兼ねて物件の現況確認や周辺環境について知りたく、借主さんにいろいろ教えてもらいました。
そして話の最後に家賃をもう少し下げていただけないか、とお願いされました。
(もともと前オーナーに打診していたようですが、私には伝わっていませんでした)
本来であれば初めましての人にいきなりお金の話をするのか、と思うかもしれません。
借主さんの減額交渉の理由は「長年住んでいる、毎月の負担が大きい」でした。

【家賃減額による損得】
 この時まず損得で以下のように考えました。
損する点
・毎月のCFが減り、投資回収に時間がかかる
・言えばすぐに要求をのむオーナーだと思われる
得する点
・家賃負担が軽くなり、より長く住んでもらえる可能性がある
・言い分を聞くことでより心を開いてくれる可能性がある

借主さんは20年近く住んでおり、2年以上娘さんから同居を勧められている状況です。
しかし私はお一人で生活が厳しくなるまでこのまま住まれると読んでいました。
とりあえず給湯器替えましょう、蛇口とか洗面台も替えましょうと提案しましたが、別にいいと回答される方です。
つまり今の生活に不便さはなく、住まいに愛着がある人が2年以上同居を断っていることを見ても明らかでした。

【出口戦略を考える】
 今回訪問したことで、会話をしながら投資としてのこの物件の出口戦略について考えていました。
下の表は訪問前に想定していたこの物件の収益計算シミュレーションです。

築43年からスタートし、築48年を迎える時に売却を考えています。
家賃について、入居者さんが替わったあとに55,000円まで下げる想定をしています。(周辺の相場参考に)
心配しているのは前面道路が私道であることや再建築不可である以上、オーナーチェンジの条件でもきれいにリフォームした状態でも買い手がつくかどうかという点です。
よって想定では6年目(築48年)でほぼ土地値で売却しようと考えていました。
そして今の借主さんの状況を踏まえ、このまま大きな修繕なくあと6年延ばせたら利益は最大になると思いました。

【理論と感情論】
 さて、このように判断したのであれば恐らく減額交渉に応じないのが正解です。
しかし私は「家賃を月5,000円減の55,000円でいかがでしょう」と返答し、了承していただきました。
下げた理由は家賃負担を小さくしてより長く住んでいただくこともありましたが、一番は借主さんと長くお付き合いしたいと思ったからです。
本業である建設業の仕事でも、利益を出してこその仕事ではありますが、最終的には人情だというのが私のスタンスです。
借主さんは自分の子どもくらいの年齢である私にも丁寧に接してくださり、いろいろなお話を聞かせてくれました。
決して横柄な態度も取らず、借主さんの人となりに良い印象を持ちました。
人間ですから、仕事だとしても嫌な人には不愛想になったり、いいお客さんにはサービスしたくなる気持ちがあります。
賃貸業は長く人と付き合う商売ですから、その方が困っているのならできる範囲で助けてあげたいと思いました。
そしてもし55,000円を提示してさらに値下げを要求してこられたら、やっぱりもとの60,000円でないとダメだと断っていました。
打算的だったり人の足元ばかりみたり、自分の利益だけを押し通す人だと長く付き合うのは難しいです。
「支払えないならもっと安いところに転居してください」とだけ伝えて、二度と交渉には応じなかったでしょう。

私も今の自宅を賃貸するときに、オーナーさんといろいろお話をし、礼金を半月分減額していただきました。
その代わりにあとの契約手続きは全て相手方の都合に合わせて最短で滞りなくさせていただきました。
不動産業界はいろいろ古い習慣が残っていて個人的には理解できないこともありますが、真摯に人と向き合って話をすれば通じることもある面白い業界だと思っています。(敷金の関西ルールなんか特に謎です)
これは本業の方にも似た感じがあって、私の性に合っていると思っています。

【今後のお付き合い】
 こうしてすぐに覚書を作成し、それぞれ署名押印をかわしました。
それから別日の昼間に木の伐採をしたり、ベランダの修復に訪れました。
借主さんは仕事で不在ですが、その度に飲み物や手紙を用意され、メールをいただいたりもします。
ベランダを補修した次の日のメールにはお礼の一文と、例の向かいのおかしな住人がいなくなったと教えてくれました。
不動産屋が出入りしており、聞くと売却の手続きをしているということでした。
これは私が売却するときの心配事でもあったので、ホッとしました。
こんな風に接してくださる借主さんとこれからも長くお付き合いさせていただければと思いました。