育児におけるリスク評価と結果論

 今回はリスク評価と結果論ということについて記します。
私の仕事は建設業で現場の施工管理をしています。
同業の方はご存知かと思いますが、各作業毎、作業日毎にどんな危険が潜んでいるか、そのリスクの洗い出しや評価、優先順位などをみんなで決めた上で対策をすることで労働災害の防止に努めます。
リスクアセスメントや危険予知活動と言われるものがこれに当たります。

【リスクの捉え方】
 世の中に絶対、百パーセントあることは人が死ぬことだけです。
どれだけ対策をしても事故の可能性をゼロにすることはできません。
物理的にハード面でどれだけ対策をしても、人がやることにはミスが起こりえます。
世の中に絶対はないのです。

【どこまで対策するか】
 では何をどこまで対策するかが重要になってきます。
例えば、子どもが窓から転落してしまう可能性について、これは起こってしまうと一撃で重大な事故です。
こういう重大性が高い事故は優先的に、そして重大性が低くなるまで対策します。
窓の側に踏み台にできるものを置かない、一人でその部屋で遊ばせないよう手が掛かりますが監視するなどの対策が必要です。
さらに踏み込んで窓に柵も付ければ安心だ!と思っても、そのために窓に柵をしてはそこに雨戸の設置や洗濯物を干したりはできなくなるという側面もあります。
そこまでしてやる必要があるかと言われると、やり過ぎのように思います。

【育児においては完璧を求めやすい】
 事故の重大性の低いもので考えると、棚やテレビ台などの角にクッション材を巻くことがあります。
一人目が生まれてハイハイしだしたときは我が家もあらゆるものに取りつけました。
しかしすぐ外れる(外される)し、その都度直すことが大変でストレスでした。
これも考えによっては危険ですが、ピンポイントで台の角めがけて子どもが転倒してそこに顔面ぶつける可能性の方が小さいだろうなぁと考え直しました。
多少のけがをさせてしまうリスクはあっても、全てにおいて完璧を求めると疲れてしまいます。
しかし、このように育児においては出来る限り完璧(リスクゼロ)を求めやすい傾向があるのではないかと思っています。

理由は当たり前ですが、子どもが大切だからですね。

【必ずそうなると分かっていれば】
 10年程前になりますが、「弁護士のくず」という漫画が好きで本を読んでいました。
もう手元にないのでうろ覚えですが、失敗することを嫌う私が感心したエピソードがありました。
それは大麻を使用して捕まった売れないロック歌手の話です。
この男を警察の調査方法が不当だとして裁判で救ったのが弁護士の九頭という人です。
その男には彼女がいて、彼が直接彼女に渡して時々ふたりで大麻を吸っていました。
彼は釈放されてからロックを辞めて結婚して真面目に働くと彼女に切り出しますが、逆に彼女から別れを告げられてしまいます。
その後ストーリーの終盤で、彼女が覚せい剤を使用して亡くなったことを新聞で知ります。
九頭弁護士は調査のなかで彼女が大麻を栽培している別の男をゆすって金を要求していたことを知り、依存症ではないかと彼に忠告していました。
しかし彼は自分と一緒にいる時しか吸っていないし、自分が渡しているからそんなわけないと取り合いませんでした。

まさか自分の知らない所で彼女が覚せい剤にまで手を伸ばしていたと知り、忠告を無視して何も確認しなかったことを悔やんでいる彼に弁護士が言うのです。

「結果論だ。
必ずそうなるとわかっていれば、誰も無視しない。
しかし大抵のことは何も起こらないんだ。
世の中には他にも心配事なんてたくさんある。

それら全てを背負っていくのは不可能だ。
あんたを責められる奴なんかいない。
俺もあんたに押し付けた。」

弁護士もほぼクロだと気づいていたはずなのに、彼に忠告しておけばうまくやるだろうと放置したことを悔やんでいるようでした。
しかし彼の言う通り、他にも心配しなければいけないことはたくさんあり、全てを完璧にしないといけないというのは難しいのだろうと考えさせられました。
「結果論」という言葉はとにかく何でも完璧にするのではなく、物事に適切なリスク評価をしてそれに応じた対策をするという新たな視点を持たせてくれました。

【お互いが納得するところで折り合いをつける】
 さて、妻がキッチンで一人で料理をしているとき、10か月の長男がお母さんの近くに寄ってきます。
そして遊んでもらえないと、最近引き戸を自分で開けて廊下に出てしまうようになりました。
そのドアを開けるとすぐに下に降りる階段があります。
落ちては大変なので、妻はしょっちゅう料理を中断して長男を引き戻していました。
これが大変で全然進まない!と相談というか、当たられました。
そこで私はアマゾンで1本400円の突っ張り棒を購入して、以下のように説明しました。
・置くタイプのストッパーやつっかえ棒だと長男が外したりなめるからしないこと
・柵を設置すると大がかりで大変だということ
・ドアは開かなくてもつかまり立ちは出来るので長男のストレスも和らぐこと
・階段に一番近いドアだけ都度設置すること(他のドアは両開きで内外両方に設置する必要があり、大変だからそこまでしない)

・他のドアを開けて廊下に出てしまった場合のみ連れ戻すこと
突っ張り棒の取り付け取り外しも簡単だし、これを料理の間だけすれば大分気が楽になるのでは?と説明してこの対策に落ち着きました。

突っ張り棒の設置

両開きのドア(突っ張り棒なし)


妻は階段に行き止まり柵みたいなものが欲しい感じでしたが・・・。
妻には言っていませんが、うちの階段はらせん状になっていることと、そのため最初の2、3段は広いため、私は万が一落ちても一番下まで落っこちることはないと考えています。
この辺は個々のリスクの捉え方ですが、とりあえず妻も納得してくれたので、これで精神的に楽になってくれれば良いなと思っています。
どうしても心配で手につかない!と言われれば、次は階段の前に簡易的な柵を設置することになるでしょう。

決して自己満足で終わるのではなく、その事故の可能性と重大性、それに対する対策を冷静に評価して、できる限りストレスにならないところで折り合いをつける。
大切な子どもが万が一ケガしてもいいのか!とひょっとしたら誤解を与えてしまっているかもしれません。
しかし私は復職後に単身赴任の可能性が高く、どうしても妻の負担が大きくなります。

過度な対策はその手間からストレスを感じることもあるでしょう。

私の場合、やり過ぎて妻が精神的にダメになる方が心配です。
育児における精神的ストレスをなるべく和らげるにはどうすればいいか、適切なリスク評価と対策という視点でこれからも考えていけたらと思います。