未来への種まき

 最近「失われた30年」という言葉をたびたび耳にしますが、30年どころかこのまま40年、50年と続くんだろうなと思っています。
私が勤めている建設会社は株価や業績に関してはここ3,4年上がっています。
しかし現場にいる私の目には、ただの「利益の先食い」によるものでしかないと感じています。
そしてこの先食いによって損をしているのは、私のような中堅社員や以下後輩たちだと思います。

弊社では何が起こっているかと言うと、年々減少する工事発注量の中で利益を多く出せそうな大型物件に絞って受注し、確実に利益を出して工事を完了させる。
現場の責任者は50代の管理職が多く、それ自体はいいのですが、その人のやり方でその人が動き回って現場を仕切る。
No.2の若い人が実質現場を仕切るということをやらなくなりました。
当然、小さい現場は受注すらしていませんので、中堅以下の社員は自分が頭で現場を治める機会がなくなってきています。
その理由を推測すると、「失敗できない(リスクをとれない)」「上司の出世欲」の2点だと考えています。
会社としては失敗する(事故を起こしてしまう等)と、大型物件ばかりで稼働現場が少ない分、利益に直結します。
30代の人間に任せるよりも、今まで現場を治めてきたベテラン社員がそのままトップでやってもらった方が会社としてはリスクが小さいでしょう。
2つ目の上司の出世欲ですが、出世するには今の役職で前年度以上の利益を上げる等のわかりやすい実績が必要になるでしょう。
そうなると、若い人間の育成よりも今の戦力で利益を最大限上げる方が簡単です。
せいぜいあと10年くらいしか勤めない会社の未来よりも自分の事が大事という気持ちも分かりますが、それが「管理職」というなら違うでしょう。
会社やそこに勤めている従業員にはまだ何十年も続く未来が待っています。
「俺たちが若いころは3年経って資格取ったら1億の現場に一人で放り込まれてたわ」とか偉そうに言ってたじゃないですか。
その時の苦労や失敗の経験が自分を成長させてきたとなぜ気づかないんだろう。ふざけるなと思います。

 これは会社だけでなく、役所で言えば市長や国会議員等でも言えるのではないでしょうか。
いくら有能な人でも年齢的に60近くなってトップに立つのは長い目で見ると得策ではないように思います。(選ぶのは市民・国民ですが・・・)
退いて、そのポジションを若い人に譲ってあげてほしいです。
若くしてトップを張ることになった人は自ずと努力し、あと20年,30年働くのなら制度等も時代に合わせて見直し変えていくでしょう。
事なかれ主義、慣例主義で乗り切るには長すぎる年月ですから。
「十年後に問題が起こっても、そのときにはもう俺は引退してるからいいか」みたいな話も聞かなくなると思います。
そのような自分だけ、目先だけの考えで仕事をされると、私は明るい未来を描くことができません。
国レベルの失われた30年も、根本の原因は未来への種まきをできないからに行きつくんじゃないかなと考えています。

 

 働き方改革のもと、残業時間を減らすために通常業務以外のプラスアルファの部分はなかなかできません。
本当は後輩の育成のために細かい工事日記として現場の記録を残すようなことをやりたいと思っていますが、「会社にとって必要な業務ではない」ためなかなか思うようにできません。
会社としてはそれよりも残業時間の削減や4週8休の実現の方が成果と見なされますから。
私が入社して計画部に配属になった時、今の計画部長が当時30十代でまだ組合員でしたが、その時に業務とは別に作成してくれたエクセルの様々な構造計算例が今も多くの人に使われています。

時短になるから良いというより、考え方の確認が出来て安心感があります。
実務で使用したり、後輩の教育で使用したり、会社としても貴重な財産になっています。
彼に能力があったから成しえたとかではなく、私もそのような未来につながる種まきを自分の出来る範囲でやっていきたいと思っています。